仁和寺の概要
仁和寺(にんなじ)は京都市右京区にある非常に格式の高いお寺。真言宗御室派の総本山であり、創建から約1000年もの間皇室出身者が住職(=門跡)を務めた日本初の門跡寺院(皇族や公家が住職を務めたお寺のこと)としてその名を知られている。1994年には「古都京都の文化財」として世界遺産に登録された。
境内は非常に広大で、金堂や五重塔、二王門といった国宝・重要文化財指定の建物がずらりと並ぶ。また勅使門の先に広がっている宸殿や御所庭園は、皇室との関わりが深いことを示す仁和寺ならではの建築物である。他、本尊で国宝指定の木造阿弥陀如来坐像をはじめとした宝物も多数所蔵されている。
仁和寺の歴史
仁和寺は光孝天皇の発願により886年に建立され、2年後の888年に完成した。名前の由来は当時の元号であった「仁和」に由来する。
完成時の天皇は後に「寛平の治」として徳政を高く評価された宇多天皇。この宇多天皇が譲位後出家して仁和寺の門跡の地位に着いたことが、仁和寺の「門跡寺院」としての始まりとなった。その後、仁和寺は平安〜鎌倉期にかけて隆盛を極めることになる。
ところが、15世紀後半に勃発した応仁の乱により、仁和寺は境内のほとんどを兵火で消失するという悲運に見舞われる。ようやく再興したのは江戸時代に入ってからで、御所から現在の金堂や御影堂が下賜されるなどして、3代将軍家光の時代に再建が完了した。
仁和寺の紅葉ライトアップ
仁和寺に咲く花と言えば、ソメイヨシノが散り始めた頃に咲く遅咲き桜の御室桜が圧倒的に有名だが、晩秋の境内を赤く染める紅葉もまた非常に美しい。金堂や五重塔をはじめとした多くの伽藍の周辺にモミジの木が植えられており、見頃時期になれば鮮やかに色付いた紅葉が境内に彩りを添える。
また2019年からは「もみじライトアップ」と題して夜間ライトアップも開催されており、日中とはまた違った幻想的な紅葉風景を味わうことができる。なお、ライトアップされる箇所は年々拡大しており、今後さらに規模の大きな紅葉ライトアップイベントになることが期待される。
仁和寺の紅葉ライトアップ見どころ
中門
二王門前に広がる広大な参道の先に建つ中門は重要文化財指定。参道の両脇にはモミジの木が多数植えられており、2022年のライトアップではJR東海のキャンペーン「ひかりの京都」の一環として竹灯籠も併せて設置された。
なお、中門は階段上の少し高い所に位置しているので、門前からは正門である二王門に向かって参道を一望することもできる。
金堂
中門を抜けると、まっすぐに延びる参道の奥に巨大な金堂が姿を現す。これは元々御所にあった大裏紫宸殿を移築したもので、現存する最古の紫宸殿として国宝に指定されている。
この金堂前に延びる参道の両脇には非常に大きなモミジの木が並んでおり、ライトアップ時には闇夜に浮かび上がった金堂と紅葉の圧巻の光景を見ることができる。
五重塔
参道の途中、金堂へ向かって右手には高さ約36mの五重塔がそびえ立っている。京都市内に現存する4つの五重塔のうちの一つであり、重要文化財指定。金堂と共に仁和寺を代表する建物としてその存在感を放っている。
五重塔の前にはモミジの木が多数植えられており、見頃になれば鮮やかな赤色に葉を染める。日没後ライトに照らされた五重塔と紅葉の組み合わせは非常に壮観で、ローアングルから撮影することでこの2つを上手く重ね合わせることができる。
経蔵
金堂横右手(境内北東部)に位置する経蔵は、経典が収められている方形造の建物。こちらも重要文化財指定で、ライトアップされて闇夜に浮かび上がった姿は美しい。周囲には一部モミジの紅葉が見られる。
鐘楼
金堂横左手に位置する重要文化財指定の鐘楼は、2022年より新たにライトアップされるようになった箇所の一つ。朱塗りの外観は真っ赤に染まった紅葉と非常によくマッチする。なお、この周辺にあるモミジは仁和寺境内の中でも特に色鮮やかな印象がある。
水掛不動尊
石造りの不動明王が安置されている場所で、水を掛けて祈願することから「水掛不動」と呼ばれている。鐘楼の隣に位置し、こちらも2022年より新たにライトアップされるようになった。目の前の小道の両脇には鮮やかなモミジの木が一直線に並んでおり、境内最奥にありながらとても印象深いスポットとなっている。
紅葉ライトアップ期間と見頃時期
【ライトアップ期間】例年10月下旬〜12月上旬頃の金土日祝
※具体的な日程は毎年変わるので仁和寺のホームページを確認してください
【見頃時期】例年11月中旬〜12月上旬頃
※その年の気候状況により時期は前後します
なお、仁和寺の紅葉は場所により色付き具合が大きく異なる。具体的には、五重塔や鐘楼前のモミジは比較的早く色付きが進むが、金堂前のモミジは反対に色付きが遅い。そのため、例え「見頃状態」であっても未だ青葉の木や既に枯れてしまっている木が混在している可能性に注意する必要がある。
紅葉ライトアップ時間と拝観料
【ライトアップ時間】18:00〜21:00(17:30受付開始、20:30受付終了)
【拝観料】大人1000円、高校生以下無料
紅葉ピーク時の混雑状況
京都の紅葉スポットで心配されるのが混雑状況。夜間ライトアップで言えば清水寺や永観堂禅林寺などは想像を絶する混み具合となるが、仁和寺に関しては逆に驚くほど混雑しない。これについては
①ライトアップが始まったのが最近のことでまだ存在が認知されていない
②市街地中心部から離れており、特に夜間は周辺に観光できるスポットが存在しない
③拝観料が1000円と若干割高である
④そもそも境内が広大なので混雑しづらい
等の理由が考えられる。
とはいえ、上述したように仁和寺の紅葉ライトアップは数多くの見どころが存在し、その素晴らしさは他の有名な紅葉名所とも引けを取らない。そういう意味で、仁和寺は現状の京都における最大の穴場紅葉ライトアップスポットであると個人的に思う。もし混雑を気にすることなく京都の紅葉ライトアップを楽しみたいのであれば、仁和寺を訪問することを強くお勧めする。
仁和寺へのアクセス
①JR嵯峨野線「円町駅」より市バス(26系統)に乗車し「御室仁和寺」バス停下車すぐ
②嵐電京福北野線「御室仁和寺駅」下車徒歩約3分
③JR「京都駅」より市バス(26系統)に乗車し「御室仁和寺」バス停下車すぐ
④京阪本線「三条駅」より市バス(10系統)に乗車し「御室仁和寺」バス停下車すぐor市バス(59系統)に乗車し「御室」バス停下車徒歩約3分
⑤阪急京都線「大宮駅」より市バス(26系統)に乗車し「御室仁和寺」バス停下車すぐ
⑥阪急京都線「西院駅」より市バス(26系統)に乗車し「御室仁和寺」バス停下車すぐ
仁和寺周辺の紅葉名所
仁和寺の最寄り鉄道路線である嵐電京福北野線の沿線には、故エリザベス女王が訪れたことで知られる龍安寺や等持院、妙心寺など格式あるお寺が点在しており、またいずれも紅葉の名所でもある。加えて京福北野線の終点「北野白梅町駅」近くにある北野天満宮境内の史跡御土居も、京都有数の紅葉名所として非常に有名。こちらは仁和寺と同じく夜間ライトアップ(上画像)も開催されているので、時間があれば併せて訪問するといいだろう。
仁和寺 その他の季節
仁和寺における最大のハイライトと言えば、春に咲く御室桜。ちょうどソメイヨシノが散った頃に咲き始める遅咲きの桜で、その絶妙なタイミングの良さから見頃期間中は多くの参拝客が訪れる(夜間ライトアップも開催されている)。また、御室桜が散り始めた頃に見ごろを迎える青もみじの新緑もとても美しく、こちらも近年夜間ライトアップが行われている。