城南宮の概要
城南宮は京都市伏見区にある「方除(ほうよけ)の大社」として仰がれている神社。その名のとおり方角の災いを除くべく、建築・引越や旅行の安全、さらには交通安全に至るまで多くのご利益があるとして広く信仰されている。
境内では毎年春と秋に平安貴族の優雅な宴を再現した行事「曲水の宴」が行われることで知られている。また近年は京都を代表する梅の名所としても注目されており、枝垂れ梅と落ち椿の絶景が見られるスポットということで見頃期間中は非常に多くの参拝客が訪れている。
城南宮の歴史
城南宮は794年の平安京遷都に際し、都の安泰と国の守護を願って城(平安京)の南に鎮まる宮として創建されたのが始まりとされる。平安後期には白河上皇が城南宮を取り囲むように鳥羽離宮を造営して院政の拠点とすると、城南宮は離宮の鎮守としてより一層崇められる存在となった。また京都御所の裏鬼門(南西)に位置していたことから、方除の神としてもこの頃から既に信仰されていたとされる。
その後、15世紀後半に勃発した応仁の乱で一度は荒廃したが、江戸時代になって復興した。幕末の1863年には孝明天皇による攘夷祈願の行幸があり、その5年後に発生した戊辰戦争の初戦である鳥羽・伏見の戦いはこの城南宮が主戦場の一つとなった。(結果は錦の御旗が翻った新政府軍の圧勝に終る。)
城南宮の梅
近年の城南宮は京都を代表する梅の名所として非常に注目を集めている。回遊式庭園である神苑「春の山」において約150本もの枝垂れ梅が集中して植えられており、一面が紅白ピンク色の梅の花に覆われた光景は想像を絶するほど美しい。同じ春に咲く桜と比べ梅は地味な印象があるが、城南宮の梅はそのような固定観念を覆す程の素晴らしい景色を見せてくれる。
また城南宮には150品種・約400本もの椿の木も植えられており、2月になると深紅の「城南椿」が花を咲かせる。そして梅の見頃時期である3月に合わせるようにポトリポトリと椿の花が苔の上に落ち、春の山の最終盤では「枝垂れ梅と落ち椿」の絶景を見ることができる。
城南宮の梅見どころ
神輿舎前の枝垂れ梅
城南宮の枝垂れ梅と言えば上述したとおり神苑「春の山」に集中しているが、城南鳥居を抜けて右側、神輿舎のすぐ側にある枝垂れ梅も非常に印象的。たった一本ではあるが背丈は大きく、境内の中心付近に位置することから最も目につきやすい。また後方には拝殿や本殿、神楽殿といった社殿が建ち並んでいる。
神苑「春の山」
神輿舎の反対側に神苑の入口がある。神苑は「春の山」「平安の庭」「室町の庭」「桃山の庭」「城南離宮の庭」とそれぞれ趣が異なる5つのエリアから構成されており、社殿を取り囲むようてにして広がる回遊式庭園となっている。
まず初めに現れるのが「春の山」で、その名のとおり椿や枝垂れ梅、ミツバツツジといった春に花開く草木が植えられている。中でも枝垂れ梅が見頃になった頃は絶景で、数ある京都の梅名所の中でも最も代表するスポットの一つとして名を馳せている。
「春の山」自体はそこまで広いエリアではないのだが、中には150本もの枝垂れ梅が集中して植えられているため、所狭しと立ち並ぶ枝垂れ梅によって素晴らしい梅の花のカーテンが作り出される。また春の山は絶妙に起伏がつけられているので、視界の上から下まで一面が枝垂れ梅のカーテンに覆われる。その光景はあまりにも華やかで絶景というほかない。
枝垂れ梅と落ち椿
枝垂れ梅の絶景が広がる「春の山」の中でも最も素晴らしい光景が、春の山の最終盤で見られる「枝垂れ梅と落ち椿」の共演。手前には深緑の苔の上に花を落とした真紅の椿が、そして背後には枝垂れ梅のカーテンが美しいピンク色の背景を構成する。
その見事なまでのコントラストは見る者誰もが目を奪われる絶景の中の絶景で、今では一年を通して城南宮最大のハイライトであるだけでなく、早春の京都を最も代表する景観となっている。またその評判は関西はもとより日本全国、はたまた国外まで行き渡り、この絶景を一目見ようとした多くの観光客を惹きつけている。
神苑「平安の庭」
感動的な枝垂れ梅と落ち椿の光景が終わると、神苑は春の山から「平安の庭」エリアへと移る。こちらの庭は平安時代の貴族の邸宅・寝殿造りの庭をモデルとしており、行事「曲水の宴」が行われる場所でもある。
これ以降は春の山ほどの梅景色を見ることはできないが、ここでも向かって右手に建つ神楽殿の側に一本の白梅が咲く。その手前には池が広がり、水面に映るリフレクション風景も併せて楽しめる。
神苑「室町の庭」
参道を横断し「城南離宮の庭」を通り過ぎると、次に右手に見えてくるのが「室町の庭」。こちらは日本文化が大成された室町時代の様式で作られた池泉回遊式庭園となっており、池には錦鯉が泳いでいるなど何とも雅やかなエリア。
反対側に広がる「桃山の庭」との間には「楽水軒」という茶席があり、この付近で少ないながらも紅白の梅の花を見ることができる。また後方には摂社・唐渡天満宮(芹川神社)の鳥居も垣間見える。
唐渡天満宮(芹川神社)
社殿東側の参道沿いにはいくつかの摂社が建ち並んでおり、そのうちの一つ・唐渡天満宮(芹川神社)の周辺には多くの梅の花が咲く。これは「天満宮」の名のとおり、生前梅の花をこよなく愛していたとされる菅原道真をお祀りしていることに由来する。ここの梅だけでも十分見応えはある。
梅見頃時期・拝観時間・拝観料
【見頃時期】例年3月上旬〜中旬頃
※その年の気候状況により時期は前後します
※椿が落ちるタイミングを考えると、個人的には少し遅めに訪れるのがいいかと思います
【神苑拝観時間】午前9時〜午後4時30分(受付午後4時終了)
※神苑以外の境内は散策自由
【神苑拝観料】大人800円、小学生500円
※再入場は不可となっている ※城南宮自体は入場無料
梅ピーク時の混雑状況
京都の桜や紅葉スポットでは混雑状況が心配されるが、梅に関しては桜や紅葉ほど注目されないため、基本的に特に混雑することはない。ただし城南宮だけは例外で、見頃期間中は「ここは人気の桜スポットか」と見紛う程の多くの参拝客が押し寄せる。神苑の入場口には長い行列ができ、中へ入ればあまりの混雑に身動きが取れなくなってしまうほど。
これは神苑が回遊式庭園で順路が決まっており、また道幅が狭いために渋滞が発生しやすいからだと考えられる。中でも最大の見どころである「枝垂れ梅と落ち椿」が見られる場所では多くのカメラマンによって占領される(とはいえ、ある程度時間が経てば前の人も場所を代わってくれるので、そこまで憂慮する必要はない)。なおこの混雑は平日も休日も変わらず発生するため、できるだけ開苑後すぐに訪れるのが良いと思われる。
城南宮へのアクセス
①地下鉄烏丸線or近鉄京都線「竹田駅」より徒歩約15分又は市バスに乗車し「城南宮東口」バス停下車徒歩約3分
②JR「京都駅」より市バス(19系統)に乗車し「城南宮」バス停下車徒歩約2分
城南宮周辺の梅名所
京都で他に有名な梅名所と言えば、全国に約1万2千ある天満宮・天満社の総本社である北野天満宮(上画像)。御祭神である菅原道真が生前梅の花をこよなく愛していたことに由来し、現在においても約50種・およそ1500本もの梅の木が広い境内の至る所に植えられている。見頃は城南宮とほぼ同時期かすこし早く迎え、バスや地下鉄を利用し1時間ほどでたどり着ける。
ほか京都市内の梅名所と言えば、城南宮と同じ洛南には東寺(上画像)、洛中には京都御苑や二条城、洛西方面は梅宮大社や大覚寺、天龍寺、洛東方面は下鴨神社や平安神宮、清水寺などがある。
城南宮 その他の季節
城南宮の神苑では早春から晩秋まで四季折々の景色を見せてくれる。梅の次に見頃を迎える桜の季節では「城南離宮の庭」や「桃山の庭」にて美しい紅枝垂れ桜が見られ、その後も青もみじやツバキ、藤といった草花が競うように咲いて主役が入れ替わる。そして最後には秋の主役である紅葉が「平安の庭」や「室町の庭」を美しく彩り、神苑の一年が幕を閉じる。