京都御苑の概要
京都御苑(きょうとぎょえん)は京都の中心部である京都市上京区に位置し、広大な面積と自然を有する大型の国民公園。明治維新まで歴代天皇の住まいであった京都御所を中央に構え、その周囲を取り囲むようにして緑地が広がっている。
かつて京都御所の周囲には公家屋敷街が形成されていたが、東京へと都が移る際に天皇だけでなく公家たちも東京へ移り住んでしまった。その結果公家屋敷街は一時荒れ果てたが、その荒廃ぶりを悲しんだ明治天皇の命によって緑化整備が行われ、跡地は公園となった。これが京都御苑の始まりで、戦後は国民公園となり今では京都市民だけでなく国内外から訪れる多くの観光客の憩いの場となっている。
京都御苑の桜
広大な自然を有する京都御苑は桜の見どころも豊富で、早咲きから遅咲きまで様々な種類の桜が約1,100本も植えられている。中でも最も注目を集めるのが早咲きの枝垂れ桜で、ソメイヨシノよりも数日早く見頃を迎えることから、京都の桜を待ちきれない多くの人々を惹きつけている。
早咲き桜の名所は他にも数あれど、京都御苑ほど規模の大きなスポットは他にないため、今では京都の早咲き桜のメッカ的存在となっている。その後ソメイヨシノが見頃を迎えると注目は落ち着くが、入れ替わるように紅枝垂れ桜や山桜、八重桜といった品種も咲くので、かなり長期間花見を楽しめるスポットとなっている。
京都御苑の桜見どころ
近衛邸跡の糸桜
近衛邸跡はその名のとおり、貴族の最上級・五摂家の筆頭で藤原氏にルーツを持つ近衛家の屋敷跡。場所は御所の北側、御苑の最北部に位置し、今出川御門からが最も近い。
近衛邸は江戸時代の頃から桜の名所として知られていたようで、当時から通称「桜木御殿」とも呼ばれていた。その後明治維新に伴い屋敷は取り払われたが、庭園に関しては池(近衛池)が遺構として現在も残っている。そして桜の名所という名声も現代に引き継がれており、屋敷跡地には今も約60本の桜の木が植えられている。
それら桜のうち最も注目される品種は早咲きの枝垂れ桜で、近衛邸跡のものはその繊細さから「糸桜」とも呼ばれている。また一本一本の樹高がかなり高く、そのような大きな枝垂れ桜が集中して見られるスポットは京都でも中々珍しい。今では京都御苑における桜のメインエリアなだけでなく、京都の早咲き桜スポットにおける中心的存在にもなっている。
出水の枝垂れ桜
京都御苑にはもう一つ、枝垂れ桜が見られるスポットがある。それが園内西部を流れる出水の小川の付近に立つ一本桜で、通称「出水の桜」と呼ばれている。
その大きさは近衛邸跡の糸桜に負けず劣らずの迫力があり、こちらも非常に見応えがある。また出水の桜も近衛邸跡と同じく早咲きの品種で、ほぼ同時期に見頃を迎える。なお近衛邸跡と出水は歩いて約10分程と結構距離が離れていることに注意。
京都御苑その他の見どころ
京都御苑では桜以外にも多くの植物に親しむことができるが、中でも早咲き桜である枝垂れ桜とほぼ同時期に見頃を迎える花がいくつか存在する。いずれも中々見応えがあり、また近衛邸跡と出水の間付近に位置していることから、ぜひ枝垂れ桜と併せて楽しんでみてほしい。
ツバキ
ツバキ(椿)と言えばふっくらとしたバラのような花を咲かせる常緑高木で、花びらが一枚一枚ではなく丸ごと落ちるという珍しい特性を持つことで有名。京都御苑では近衛邸跡にある近衛池の近辺で見かけることかでき、糸桜のちょうど見頃時期には落下した椿の花…いわゆる「落ち椿」を併せて楽しむことができる。(ただし、桜と落ち椿を一緒に画角に収めるのは少々難しい…。)
シモクレン
モクレンは早春に鮮やかな紫や濃いピンクの花を咲かせる落葉樹で、中でも紫色の花を咲かせるものは「シモクレン」と呼ぶ。特徴的なのは大きな花びらで、7〜10cm程ある。(繊細な花びらの枝垂れ桜を見た後だとギャップが凄い。)京都御苑では西門の一つである中立売御門の東側にて見ることができる。
ハクモクレン
モクレンの中には白い花を咲かせるものもあり、「ハクモクレン」と呼ばれる。特徴的な花びらはシモクレンよりもさらに大きく10〜15cm程もあり、天に向かって無数の花をつけるその姿はまるで白いハトの集団が空に向かって飛び立つかのよう。
京都御苑にハクモクレンはいくつか存在するが、近衛邸跡と出水の間だと京都御所の西門の一つである宜秋門の南西にあるものがオススメ。とても印象的な花で周囲には人だかりができる程なので、見落とす心配も低い。
桃林
上述した宜秋門付近のハクモクレンの木から少し南下したところ、蛤御門の近くには桃林が広がっている。桃の木の本数は約70本と小規模ではあるが、関西で桃の花を見られる場所は非常に少ないため、貴重な桃の名所となっている。
京都御所の桃はまだ若木であるからか、背丈は梅の木と似て低い。また花の色も梅と似て赤白ピンク色をしているが、明度は梅よりも高くパステルカラーのような色合いをしている。見ていてとても爽やかな気持ちにさせてくれる花で青空が非常によく似合う。
梅
桃林のすぐ南側には梅林も広がっており、中では約200本もの梅の木が植えられている。桜のシーズンにはその多くが見頃を終えてしまっているが、梅は品種により開花時期が幅広いので、遅咲きの梅であれば枝垂れ桜の時期でも見頃の状態のものを見ることができる。また梅の木は梅林に限らず様々な場所で見かけることができ、上の画像は椹木口門の入口付近より撮影したもの。
ユキヤナギ
ユキヤナギはその名のとおり、柳のように枝垂れた葉に雪のような純白の花を咲かせる落葉低木。京都御苑では出水より少し南西に位置する椹木口門付近にて群生している。一帯は本当に雪が積もったかのように真っ白に染まるので、とても印象深く写真撮影に興じる人も多い。
桜見頃時期・入苑時間・入苑料
【枝垂れ桜見頃時期】例年3月下旬〜4月上旬頃
※その年の気候状況により時期は前後します
※早咲きの桜なのでソメイヨシノよりも数日早く見頃を迎えます
【入苑時間】入苑自由
※夜間ライトアップは行われておらず、またライトアップ撮影は禁止されている
【入苑料】無料
桜ピーク時の混雑状況
京都の桜スポットで心配されるのが混雑状況。京都御苑については敷地がとにかく広大なので全体的に混雑することはないが、枝垂れ桜に関して言えば周囲に人だかりができるので、人を入れないようにして撮影するのはかなり難しい。ただ京都御苑は24時間出入り自由となっているので、写真撮影にこだわるのであればなるべく早朝の早い時間帯に訪れるのが良い。
京都御苑へのアクセス
【近衛邸跡方面(園内北部)】
①地下鉄烏丸線「今出川駅」下車徒歩約5分
②京阪本線「出町柳駅」下車徒歩約15分
③「烏丸今出川」バス停より徒歩約5分
【出水方面(園内西部)】
①地下鉄烏丸線「丸太町駅」下車徒歩約6分
②京阪本線「神宮丸太町駅」下車徒歩約17分
③「烏丸下長者町」バス停より徒歩約3分
京都御苑周辺の桜名所
京都御苑周辺の早咲き桜と言えば、京都御苑から見て北東に位置する本満寺の枝垂れ桜が有名。とにかく大きな一本桜で、通常は非公開だが春の桜シーズン中のみ開放されている。場所的には近衛邸跡からが近い。
ほか、下立売御門の北西方面にあり烏丸通りに面する有栖川宮旧邸(上画像)や、烏丸通りをずっと南下したところにある六角堂や渉成園も早咲きの桜スポット。こちらは京都御苑の西方に位置するので、出水の桜を見た後に向かうと良い。
京都御苑 その他の季節
京都御苑で桜と同じくらい注目を集める時期は秋の紅葉の季節。園内の至る所でモミジやイチョウの紅葉を見ることができ、その一方で敷地が広大なので混雑しづらい。一年を通じ最も観光客が集まると言われる秋の京都において貴重な穴場紅葉スポットとなっている。また3月になれば梅林の梅が見頃を迎え、京都における梅スポットの一つにもなっている。