高瀬川の概要
高瀬川は京都の中心部である中京区〜下京区(二条〜十条)にかけてを南北に流れる小河川。東側に流れる京都を代表する大河・鴨川から二条にて分水し並行して流れた後、十条にて再度合流するという構造を取っている。
鴨川との間には喫茶店やバー、スナック、料亭などが軒を連ねる木屋町通りも並行して延びており、一帯は京都有数の繁華街の一つにもなっている。正直、京都の中ではあまり治安の良い場所とは言えないが、近年は行政による整備が進み都心でありながら自然と調和した美しい景観が見られるようにもなっている。
高瀬川の歴史
高瀬川は元々、京都中心部と伏見との間を結ぶ水運としての役割を担う運河であった。その始まりは江戸時代初頭、かの有名な方広寺大仏殿再建の際に豪商・角倉了以が資材運搬を任されたが、当時の鴨川は暴れ川のため水運による運搬が難航。そこで角倉了以・素庵父子は幕府に運河の開削を願い出、その結果完成したのが現在の高瀬川であった。
その後も高瀬川は大阪からの物資を伏見港を経て京都中心部へと運ぶ運河として300年ほど利用されたが、鉄道の発達等により1920年にはその役割を終えた。ちなみに高瀬川は運河時代から水深の浅い川で、当時の運送業者は浅川専用の船に物資を積み替える必要があった。その船の名を「高瀬舟」と呼び、高瀬川という名称はこれに由来していると言われている。
高瀬川の桜
現在の高瀬川は北は二条大橋付近の押小路通りから南は五条通りまで、川沿いに桜並木が延々と続く桜の名所となっている。中でも京都最大の繁華街である四条河原を範囲に含んでいるのが大きな特徴で、阪急・京都河原町駅の出口を出てすぐのところにある四条小橋の下を高瀬川が通っている。そのアクセスの良さは京都の桜名所の中でもNo.1と言っていだろう。
また桜だけでなく、川底が見える程に浅い高瀬川の穏やかな流れや柳の木の新緑、そして川沿いに軒を連ねる飲食店の景色などが相まって、一帯にはとても風情ある春の京都らしい風景が広がっている。なお、高瀬川の桜は四条河原周辺だけでなく全域的に素晴らしい光景が見られるので、隈なく散策すれば京都の桜名所にしてはかなりのボリュームとなる。
高瀬川一之船入
上述したとおり高瀬川の桜は京都の桜名所にしてはかなり範囲が広く、初めて来た人にはどの辺が見どころなのかいまいち分かりにくい。既に取り上げた四条小橋からの景色がそのアクセスの良さから最も多くの人の目に留まりやすい光景だが、最大の見どころを挙げるとすれば高瀬川の最北端に位置する一之船入(いちのふないり)となるだろう。
「船入」とは高瀬川が運河だった時代に荷物の上げ下ろし等に利用された船溜所のことで、かつては計9箇所の船入が存在したが現存するのは一之船入だけとなっている。そして現在の一之船入には復元された高瀬舟が設置されており、桜と併せて往時の高瀬川の歴史を偲べるスポットにもなっている。
晩春の見どころ・桜の花筏
高瀬川の桜におけるもう一つの大きな見どころは、散り際に見られる「花筏」と言われる光景。これは散った桜の花びらが川面に敷き詰められることによってできる現象で、高瀬川では立誠ガーデンヒューリック付近に架かる蛸薬師橋や南車屋橋周辺にて例年発生する。
緩やかに流れる高瀬川が一面ピンク色に覆われた光景はとても素晴らしく、道行く人々も思わず足を止めて写真撮影に興じてしまうような印象的な景色となっている。(ただし、場所柄かポイ捨てのゴミの姿も目立つのが個人的に少し残念…。)なお、京都では他に哲学の道や伏見十石舟でも花筏が発生する。
高瀬川の桜見頃時期
毎年3月下旬〜4月上旬頃
※その年の気候状況により時期は前後します
※桜の花筏は満開を過ぎてから数日後に発生します
桜ピーク時の混雑状況
京都の桜スポットで心配されるのが混雑状況。高瀬川に関しては四条河原にある四条小橋付近は当然混雑するものの、そこから離れてしまえば人通りも少なくなり、特に最大の見どころである一之船入は四条河原から歩いて15分以上も離れているためか、人もほとんどまばらとなる。
そういうことから、高瀬川は意外にも混雑を避けて楽しむことのできる京都の穴場桜スポットとなっている。その一方で京都河原町駅をはじめとした主要駅からのアクセスは抜群に良いことから、個人的にはこの高瀬川こそが京都における最大の桜の穴場名所なのではないかと思う。
高瀬川へのアクセス
【四条小橋】
①阪急京都線「京都河原町駅」下車約1分
②京阪本線「祇園四条駅」下車徒歩約3分
【蛸薬師橋/南車屋橋】
①阪急京都線「京都河原町駅」下車徒歩約3分
②京阪本線「祇園四条駅」下車徒歩約6分
【一之船入】
①地下鉄東西線「京都市役所前駅」下車徒歩約4分
②「京都市役所前」バス停下車徒歩約4分
③京阪本線「三条駅」下車徒歩約7分
高瀬川周辺の桜名所
高瀬川の本流でありすぐ東側を流れる鴨川も京都における穴場の桜名所。こちらはとにかく河川敷が広大なので、ゆったりと腰を下ろしながら花見を楽しめるスポットとなっている。また鴨川の対岸に延びる祇園白川(上画像)では京都の中でも特に京都らしい古風な街並みと美しい桜並木が広がる、京都を最も代表する桜名所の一つ。