デ・ハール城の概要
デ・ハール城(De Haar Castle)はオランダ中部のユトレヒト(Utrecht)郊外に位置するオランダ最大の城。その歴史は14世紀末まで遡ることができるが、現在の建物は19世紀末から20世紀初頭にかけて再建されたものとなっている。現在のデ・ハール城は130エーカー以上に及ぶ広大な公園としても整備されており、その一角にネオゴシック様式の立派なお城が聳え立つ。
城内は豪勢な装飾で彩られており、さらには200もの部屋や数多くのコレクションを擁し、その一部は一般に公開されている。(中には日本の徳川将軍にまつわるものもある。)また城の周囲にはヴェルサイユ宮殿の影響を受けたと言われる美しい庭園が広がっており、欧州貴族の華やかな美意識と調和したヨーロッパらしいお城の風景を楽しむこともできる。
デ・ハール城の歴史
デ・ハール城は1391年にはその存在が確認されており、同年デ・ハール家が城とその周辺の土地一帯の所有権を握った。15世紀になるとデ・ハール城はファン・ザイレン家の手へと移り、それから幾度かの崩壊と再建を繰り返した後、1672年のオランダ侵略戦争(フランスのルイ14世がオランダに侵入した戦争)によって殆どが荒廃し、その後19世紀まで廃墟同然の状態として長らく放置された。
潮目が変わったのは1890年。デ・ハール城を相続したエティエンヌ・ファン・ザイレンはロスチャイルド家の令嬢と結婚しており、彼は妻の実家の財力を存分に活用することでデ・ハール城の再建に着手した。このとき二人はピエール・カイペルス(※)にその修復を依頼しており、カイペルスは1892〜1911年の20年間に渡る工事を経てデ・ハール城を現在の形に復元させた。
(※)オランダを代表する建築家で、アムステルダム中央駅やアムステルダム国立美術館の設計を手掛けたことで非常に有名
デ・ハール城の見どころ
デ・ハール城最大の見どころは言うまでもなくデ・ハール城そのものであるが、その広大な敷地から他にも様々な注目すべきポイントが存在する。
まずはデ・ハール城の入り口に建つ立派な城門。中央に掲げられた紋章の下には「Zuylen(ザイレン)」や「Haar(ハール)」といった歴代城主の家名も見える。
城門を抜けると四方を赤レンガで囲まれた広場に出る。ここまでが無料エリアで、カフェやレストラン、トイレ等がある(有料エリアには売店ぐらいしか食べるところがないので注意)。奥にある建物内でチケットを購入すると、いよいよデ・ハール城の本体がお目見えする。
有料エリアの中へ入るとまず目に飛び込んでくるのは、丁寧に芝刈りされた美しい庭園とその奥に建つデ・ハール城の風景。このデ・ハール城の周囲に造成された庭園は前述したとおりヴェルサイユ宮殿の影響を大きく受けたものと言われ、そのうち城西側に広がるこちらの庭園はバラ園でもある。見頃時期である6月頃になると赤白ピンクの色とりどりのバラの花が庭園に彩りを添える。(なお筆者が訪れたのは5月中旬だったので少し早かった。)
庭園内をデ・ハール城に向かって真っすぐに延びる、蔦が織り成すこちらのアーチ状のトンネルも非常に印象的。このときは藤(?)の花の紫が良いアクセントとなっており美しかった。
ところで、ヨーロッパの城と言えば山城が多いため堀が存在しないことも珍しくないが、デ・ハール城はさすが平坦な国・オランダの城だけあって立派な堀が周囲を取り囲んでいる。風のない日には水面に城が反射することで出来るリフレクション写真を撮影することも可能。
城の周囲には他にも様々な趣向を凝らした庭園が整備されているが、中でも城東側に広がる庭園はデ・ハール城の正面玄関前に位置し、夏になると放射状に植えられた花々が色鮮やかに咲き誇る。その優美な光景はデ・ハール城の入場券にも掲載されており、まさしくデ・ハール城のハイライトと言える場所だろう。(なお筆者が訪れた5月中旬はちょうど萌芽した頃だった。)
また城北の方にも広大な自然公園が広がっているが、あまりにも範囲が広いので徒歩で散策するにはかなりの時間と体力が必要となることに注意。そして最後に、デ・ハール城は城の内部を見学することもできるが、筆者が訪れた際は城内見学チケットが売切れとなっていたため見学できなかった。そのためできれば早めの時間帯に訪れた方が良い。
デ・ハール城の営業時間と入場料
【営業時間】
・公園:午前9:00〜午後5:30
・城:午前11:00〜午後5:00
【入場料】
・公園:€7(€1=150円として約1,100円)
・城:€19.0(€1=150円として約2,900円)(※公園の入場料を含む)
デ・ハール城へのアクセス
オランダ鉄道「ユトレヒト中央駅(Utrecht Centraal)」よりデン・ハーグ中央駅(Den Haag Centraal)行き各駅停車(Sprinter)に乗車し、「Vleuten駅」下車
①路線バス(127系統)に乗車し「Brink」バス停下車徒歩約15分
②徒歩約45分
※Vleutenからデ・ハール城までの道のりはオランダの郊外らしいのどかで美しい景色が続くので、個人的には時間はかかるが歩いて行くのがオススメ