東寺の概要
東寺(とうじ)は京都市南区に位置する洛南を最も代表する寺院で、別名・教王護国寺とも呼ばれる。真言宗の総本山及び根本道場であり、また現存する唯一の平安京の遺構として非常に高い格式と深い歴史を誇る。1994年には「古都京都の文化財」として世界遺産に登録された。
境内はJR京都駅から歩いて行けるという好立地にあり、また敷地内には日本一高い五重塔や本尊・薬師如来像をはじめ非常に多くの国宝・重要文化財を擁している。加えて桜や紅葉の名所でもあるなどとにかく見どころの多いスポットであり、京都を代表する名所の一つとして観光客からの人気も高い。
東寺の歴史
東寺創建のきっかけは平安京遷都の頃まで遡る。新都建設に当たって東西王城の鎮護並びに東西国家の鎮護を目的として、平安京の正門である羅城門を境に二つの寺院が東西に造られた。それが「東寺」「西寺」であり、それぞれ796年に建立された。
後に東寺は823年、当時の嵯峨天皇によって弘法大師・空海へと下賜され、空海は東寺を真言密教の根本道場として講堂や五重塔といった伽藍造営に着手した。しかしながら平安末期以降は幾度となく戦乱や火災等による衰退の危機に見舞われ、羅城門や西寺の方は荒廃・消失してしまったが、東寺はその都度復興を繰り返して現在も残っている。
なお、東寺が復興を遂げた要因の一つとして弘法大師信仰の隆盛に拠るところが大きく、鎌倉期以降は皇族から庶民に至るまで「お大師様の寺」として広く親しまれた。そしてその信仰は現代にまで引き継がれており、今も毎朝6時には空海に朝食を捧げる生身供(しょうじんく)の儀式が行われ、また空海の命日である毎月21日には境内に多くの露天が出店する弘法市が開催されている。
東寺の桜ライトアップ
東寺はその長い歴史や貴重な伽藍、文化財だけでなく、四季の変化に非常に富むことでもよく知られている。中でも最も境内が華やかな景色に包まれるのが春の桜の季節で、庭園内に咲き乱れるソメイヨシノや不二桜という大きな枝垂れ桜など、見どころが満載。中でも不二桜と五重塔が織り成す景観は今では京都を最も代表する桜景色となっている。
また期間中は夜間特別拝観も毎年実施されており、ソメイヨシノやそびえ立つ不二桜、五重塔がライトアップされた光景はまさしく圧巻の一言。加えて東寺のライトアップはその他の夜桜名所と比べてとりわけライトの光量が明るく、よりダイナミックで幻想的な空間が境内に広がっている。その圧倒的な素晴らしさは数ある京都の夜桜スポットの中でも一番の名所と言って過言ではなく、毎年春の季節になると多くの観光客を魅了している。
桜ライトアップ見どころ
五重塔
五重塔は東寺のシンボルであると同時に京都を代表するランドマークの一つでもある。高さは約55mで木造塔としては日本一の高さを誇り、国宝指定。また日没後は夜間拝観に関係なく毎日ライトアップされているが、春の夜間特別拝観期間中はおよそ200本もの桜が咲き誇る庭園内にて、金色に光り輝く五重塔と合わせた夜桜の景色を見ることもできる。
東寺の庭園では本当に至るところで桜が咲くが、中でも五重塔の周辺にて多くのソメイヨシノが見られる。その中でも五重塔と金堂を結ぶ通り道から五重塔を見上げた景色が素晴らしく、漆黒の夜空を埋め尽くすように咲き乱れるソメイヨシノと五重塔の光景は息を呑むほど美しい。また周辺には大型ライトが設置されているため光量も明るく、比較的容易に綺麗な写真を撮影できる。
瓢箪池
東寺における代表的な撮影ポイントと言えば、塔北側に広がる瓢箪池という大きな池。この池の水面に五重塔が反射して映り込むことによって、素晴らしいリフレクション写真を撮影することができる。また春の季節になれば池の周囲にある桜木が花を咲かせることで、京都屈指の絶景桜ポイントとしても知られている。
この瓢箪池が最も幻想的な雰囲気を醸し出すのが、夜のライトアップ。特に春の夜間拝観時の、ライトに照らされ光り輝く五重塔と夜桜が作り出すリフレクションは京都の春を代表する絶景シーンの一つと言っていい。しかしながら見頃時期には凄まじい数の拝観客が撮影ポイントに殺到するので、なるべく拝観時間終了間際に立ち寄るのがオススメ。またリフレクション構図は風によって水面が波立つと五重塔が上手く映り込まないため、できれば風のない日に訪れると良い。
金堂
金堂は五重塔と同じく国宝指定で、東寺の本堂に当たる諸堂塔の中でも中心的な堂宇。この金堂と五重塔の間を結ぶ通り道は両脇にソメイヨシノの木が立ち並ぶ桜並木となっているため、金堂の周辺でもまたとりわけ多くの桜が見られる。金堂の巨大な外観を夜桜が包み込んだ光景が特に素晴らしい。加えて夜間特別拝観時には建物がライトアップされるだけでなく、本尊である薬師三尊像が安置されている内部を拝観できるようにもなっている。
講堂
金堂の北隣に建つ講堂はこちらも巨大な建物で、重要文化財指定。内部には密教の教えを現した曼荼羅をさらに視覚的に具現化した立体曼荼羅を構成する21体の彫像が安置されており、夜間特別拝観時には金堂と同じく内部を拝観できる。そしてこの講堂の周辺にも多くのソメイヨシノが見られる。
不二桜
現代の東寺において五重塔と同じくらい存在感を放つのが、庭園入ってすぐの所に立つ巨大な枝垂れ桜。名を不二桜と言い、高さ13mで樹齢は120年を超えるとされる。元々は盛岡で育てられたこの桜木は、その後秋田、三重を経て2006年に東寺境内に移植された比較的新しい見どころとなっている。
後方には高さ55mの五重塔がそびえ立っており、またその間の距離が絶妙に離れていることから、不二桜と五重塔が隣り合うという壮観な光景を目にすることもできる。見頃時期になれば類稀なる絶景が広がり、今では東寺、引いては京都における代表的な景観の一つとなっている。そして何より、夜間拝観時にてライトに照らされ、同じくライトアップされた五重塔との共演は京都の桜シーズンにおける最大のハイライトの一つと言ってよく、まさしく圧巻の景色が見られる。
※五重塔と不二桜を同じぐらいのサイズで写したい場合は、駐車場の横に建つ食堂という建物の付近から撮影すると良い。ただし、少し距離が空くので望遠レンズがあるとなおよい。
桜ライトアップ期間と見頃時期
【ライトアップ期間】例年3月中旬〜4月中旬頃
※具体的な日程は毎年変わるので東寺のホームページを確認してください
【見頃時期】例年3月下旬〜4月上旬頃
※その年の気候状況により時期は前後します
※夜間ライトアップ中はライトアップの照明効果により見頃前（5分咲きぐらい）であっても十分楽しめます
桜ライトアップ時間と拝観料
【ライトアップ時間】18:00～21:30（受付は21:00まで）
【拝観料】大人・高校生1,000円、中学生以下500円
※日中は庭園内のみ有料でその他は無料で拝観できるが、夜間特別拝観では入口である慶賀門（東門）から先が有料となる
桜ピーク時の混雑状況
京都の桜スポットで心配されるのが混雑状況。東寺に関しては京都を代表する夜桜名所のため、言わずもがな非常に多くの観光客が詰めかけ、拝観開始前には長蛇の列が出来る。中でも特に混雑するのは瓢箪池の北端・五重塔のリフレクション写真が撮影できる地点で、ここはそもそも撮影できる場所自体が狭いために周辺には四重五重の人だかりが常にできる程。
とは言え、ある程度時間が経てば前の人も場所を代わってくれるので、そこまで憂慮する必要はない。また拝観時間終了間際になると瓢箪池であっても流石に人がはけてくるので、なるべく遅い時間帯に立ち寄った方が良い。あとは不二桜の周りにも多くの人だかりができるが、こちらは周囲のスペースに余裕があるためそこまで不安視する必要はない。
最後に東寺の境内全体に関して言えば、東寺の拝観には順路というものが存在しないため、幸いなことに渋滞は発生しづらい。そのため混雑はするものの自由に場所を行き来できるので、そこまでストレスを感じるということはないと思う。個人的には多くの人が押し寄せる割には落ち着いて桜を鑑賞・撮影できるので、混雑が酷い京都にしては比較的良いスポットであると思う。
東寺へのアクセス
①JR「京都駅」下車徒歩約15分
②近鉄京都線「東寺駅」下車徒歩約10分
③阪急京都本線「大宮駅」より市バス(18・71・207系統)に乗車し「東寺東門前」バス停下車徒歩約1分
東寺周辺の桜名所
東寺の桜を見に行ったらぜひ併せて訪れたいのが、境内北西方面・東海道新幹線沿いに境内を構える六孫王神社。東寺に比べると随分小ぶりではあるがここは知る人ぞ知る桜の名所で、参道沿いに一直線に連なる桜並木が素晴らしい。また日没後はライトアップ(上画像)もされており、他の京都の桜スポットと比べれば人もまばらなので落ち着いた雰囲気の中幻想的な夜桜風景を鑑賞できる。他、京都駅の北側にある東本願寺の飛地境内地にある庭園・渉成園も京都の穴場的桜スポットで、こちらも2023年よりライトアップが行われるようになった。
東寺 その他の季節
東寺は一年を通して四季折々の変化を楽しめるスポットなので、春の桜の季節以外にも素晴らしい景色が広がる。中でも桜の時期に負ける劣らず美しいのが秋の紅葉の季節。赤く燃え上がるようなモミジが瓢箪池の周囲を取り囲んだ景観は特に素晴らしく、こちらも幻想的な夜間ライトアップが実施される。
また初夏の季節に見られる瑞々しい青もみじの時期も美しく、こちらもまたGWの期間中に夜間ライトアップ(上画像)が開催されている。その他、冬の時期に稀に見られる雪景色や春の訪れを告げる梅や河津桜もとても見応えがある。このように何度足を運んでも季節ごとに素晴らしい景色が見られるのが、東寺というスポットの大きな魅力と言えるだろう。
