六孫王神社の概要
六孫王神社(ろくそんのうじんじゃ)は京都市南区にある神社で、洛南を最も代表する寺院・東寺の境内北西方面に位置する。巨大な寺院である東寺と比べるとかなり小ぢんまりとしている神社だが、その境内には非常に多くの桜木が植えられており、知る人ぞ知る桜の名所として知られている。
また境内は東海道新幹線の線路沿いに位置していることから、神社の敷地内より新幹線の走る姿が見られることでも知られる。ほか、JR京都駅から歩いて行けるという好立地や、観光客が少なく落ち着いた雰囲気が境内に流れていることから、京都の神社仏閣における穴場的スポットでもある。
六孫王神社の歴史
六孫王神社の御祭神は源経基。経基は後に「武家の棟梁」として名を馳せることとなる清和源氏(※)の祖として知られているが、これは経基が清和天皇の孫でかつ臣籍降下時に「源氏」の姓を与えられたことに由来する。また源経基の父である貞純親王は清和天皇の第六皇子に当たる人物で、そのような経緯から経基は「天皇の六男の孫」という意味で「六孫王」と名乗っていたともされる。(無論、六孫王神社という名称はこのことに由来している。)
※清和源氏の系譜を引く(若しくはそう主張している)歴史上の人物としては、鎌倉幕府を開いた源頼朝、室町幕府を開いた足利尊氏、江戸幕府を開いた徳川家康など錚々たる顔ぶれがある。
平安中期の時代を生きた経基は承平天慶の乱の追討軍の武官として名を連ねるなどして活躍したが、晩年は現在の六孫王神社の境内に当たる場所に邸宅を構え余生を過ごした。そして961年の臨終の折、「霊魂滅するとも龍(神)となり西八条の池に住みて子孫の繁栄を祈るゆえにこの地に葬れ」と遺言を残しこの世を去った。経基の長子であった源満仲は遺言どおり、同地にて経基の遺骸を埋葬して墓所を建立し、またその前に社殿を築いた。これが六孫王神社の始まりとされる。
その後六孫王神社は一時衰退した時期もあったが、18世紀に入ると江戸幕府の主導により社殿が再建された。この幕府による再建は徳川将軍が「清和源氏の血を引く」と公称しているところが大きく、またこのとき再建された社殿は今もなお残っている。そして戦後になると、東海道新幹線の用地として境内の一部が買収されてしまい、現在のような小ぢんまりとした神社となった。
六孫王神社の桜ライトアップ
現在の六孫王神社は他の京都の有名な神社仏閣と比べるとあまり知られていない存在ではあるが、春の季節になると一躍一部の京都好きから注目を集めるスポットとなる。桜の見頃時期になれば狭い境内に非常に多くの桜が競うようにして咲き誇り、中でも大鳥居から本殿までを一直線に繋ぐ参道沿いに立ち並ぶ桜並木が素晴らしい。その整然とした桜景色は春の京都随一の美しさを誇ると言っていい。
また日没後は参道沿いの灯篭に明かりが灯ることで、夜桜の風景も併せて楽しむことができる。なおライトアップ自体は夜桜鑑賞用に行われているわけではないため、お隣の東寺と比べるとそれ程明るくはないが、静謐な神社の境内を夜桜が包み込んだ光景は日中とはまた違って非常に幻想的。加えて六孫王神社の参道は真西に向かって延びているため、黄昏の時間帯に訪れれば夕焼けをバックにした妖艶な桜景色もまた見ることができる。
桜見頃時期・参拝時間・参拝料
【見頃時期】例年3月下旬〜4月上旬頃
※その年の気候状況により時期は前後します
※夜間ライトアップ中はライトアップの照明効果により見頃前(5分咲きぐらい)であっても十分楽しめます
【参拝時間】散策自由
【参拝料】無料
桜ピーク時の混雑状況
京都の桜スポットで心配されるのが混雑状況。夜間ライトアップで言えば東寺や清水寺などは非常に多くの観光客が押し寄せるが、六孫王神社に関しては元々の知名度がそれ程高くないこともあり、見頃時期であっても人はまばらで落ち着いた雰囲気の中夜桜風景を鑑賞することができる。(しかしながら、ここ最近はSNS等で注目を集めたことにより徐々に人が増えてきているようではある。)なお、最大の見どころである参道の桜並木の写真を撮るために長時間参道を占領することは、他の参拝客の迷惑になると同時に神社側もそのような行為を行わないよう通知を出しているため、慎みましょう。
六孫王神社へのアクセス
①JR「京都駅」下車徒歩約20分
②近鉄京都線「東寺駅」下車徒歩約15分
③市バス(16系統)「六孫王神社前」バス停下車徒歩約3分
六孫王神社周辺の桜名所
六孫王神社より徒歩5分程のところに位置する東寺は京都を代表する桜名所。庭園内に咲き乱れるソメイヨシノや不二桜という大きな枝垂れ桜、そして日本一高い五重塔など見どころが満載で、中でも見頃時期に行われる夜間ライトアップ(上画像)は圧巻の一言。京都一の夜桜スポットと言っても過言ではなく、毎年春になると多くの観光客を魅了している。ほか、京都駅の北側にある東本願寺の飛地境内地にある庭園・渉成園も京都の穴場的桜スポットで、こちらも2023年よりライトアップが行われるようになった。