南京路の概要
南京路は中国最大の世界都市・上海(Shanghai)のメインストリート。市内中部を東西に走っており、その総距離は約6kmに及ぶとされる。
なお現代の南京路は厳密に言うと、通りの途上に位置する上海人民公園を境に南京東路と南京西路の二つに分かれている。そして一般的に、南京路とは南京東路の方を指す。(当記事では南京東路の方を取り上げている。)
南京東路は上海人民公園から上海一の人気観光エリア・外灘(わいたん/バンド)までの約1.6kmを結んでおり、その道中には非常に多くの商業施設や飲食店等が軒を連ねている。また一帯は歩行者天国にもなっており、一日に100万人もの人々が行き交う中国屈指、世界有数の繁華街となっている。
南京路の歴史
南京路の歴史は19世紀の半ばまで遡る。当時はイギリスを始めとした欧米列強が上海の土地を租借し始めていた頃で(この租借された土地のことを「租界」と言う)、中でもイギリスは上海市内を流れる黄浦江の西岸、いわゆる外灘と呼ばれるエリアを中心とした土地一帯を租界として獲得していた。
南京路は当初、このイギリス租界内に延びる名も無い小道に過ぎなかったが、1865年に「南京路」という名称が正式に付けられると、その後はガス灯や電灯などのインフラが整備されていった。(なお、イギリス租界は1863年にアメリカ租界と合併して「共同租界」へ移行している。)
それから20世紀に入ると、南京路には大型のデパートや遊劇場が相次いで建設され、大都会・上海の消費文化や都市文化をリードする一大繁華街と化した。中国語では「大馬路(だまろ)」と呼ばれ、日本でも知られた存在となっていた。なお、この20世紀前半に造られた建築物は現在も多数残っているため、南京路では今でもレトロな近代的建物(特に新古典主義建築)を数多く見ることができる。
その後、第二次大戦の最中に南京路は「南京東路」という名称に改められ、また上海競馬場(現在の上海人民公園)より西側の道が「南京西路」となり、この二つを合わせて「南京路」という現在の形となった。さらに時は下って21世紀に入ると、南京東路が歩行者天国となるなど近年は再開発も活発化している。
南京路の見どころ
南京路ではとにかく沢山のお店が営業しているため、様々な所に目が移ってしまいがちだが、中でも注目したい建物は「四大デパート」。これは20世紀に入ってから南京路に登場した四つの大型デパートのことで、「先施(シンシア/1917年開業/現・上海時装公司/上画像右)」「永安(ウインオン/1918年開業/現・永安百貨/上画像左)」「新新(シンシン/1926年開業/現・上海市第一食品商店)」「大新(ダーシン/1936年開業/現・上海市第一百貨商店)」を指す。
これらデパートは外国資本ではなく中国資本で開業されたこと、また中産階級をターゲットにしていたことに大きな特徴があり、その大衆的な営業戦略は戦前の上海の華やかな消費文化を牽引した。また四大デパートはビルのデザインも特徴的で、中でも先施デパートは南京路における最初の鉄筋コンクリート建築であり、正面上部に聳え立つ時計台「摩星塔」は100年以上が経った今でも一際の存在感を放っている。
ほか、南京路を東…すなわち外灘の方向へと進んでいくと、南京路の終着点には左手にサッスーンハウス(現・和平飯店北楼)、右手にパレスホテル(現・和平飯店南楼)が外灘に面して建っている。そしてその間からは、黄浦江の対岸に超高層ビルが乱立する浦東新区(ほとうしんく)の未来的光景を垣間見ることもできる。その中でも特に目立つ建物と言えば、高さ468mを誇る東方明珠電視塔だろう。なお、そのまま東へ進めば浦東新区の景観を非常によく見渡せる場所にもたどり着ける。
南京路の混雑・治安状況
南京路は上海における最大の繁華街であることから、そこに集まる人の多さもまた凄まじい。とはいえ、南京路の道幅は28mと非常に広々としていることから、混雑はするものの身動きが取れなくなるという程ではない。
南京路で注意すべきは、どちらかと言うと混雑よりも詐欺か。南京路のような中国の繁華街では、一見素朴な雰囲気をした詐欺師二人組が日本人に声をかけ、相手が気を許したところでぼったくりの茶館に誘導するというのが典型的な詐欺の手口となっている。(筆者も夜の南京路を歩いていたら、40〜50代くらいの女性二人組に急に話しかけられたことがある。)これは中国に限らず、外国で見知らぬ人から妙に親しみやすく話しかけられても、絶対に相手にしてはならない。
南京路へのアクセス
上海地下鉄2or10号線「南京東路駅」下車すぐ
南京路の夜景
繁華街である南京路は夜になってもとても賑やかで、むしろ夜の方が人出が多い印象すらある。また南京路に建ち並ぶ建物もライトアップされるので、美しい夜景を見ながら南京路の道のりを歩くのも非常に楽しい。加えて南京路から垣間見える浦東新区の夜景、特に東方明珠電視塔のライトアップもまた素晴らしい。
南京路周辺の名所
南京路を訪れた観光客の殆どは、黄浦江の西岸に広がる上海一の人気観光エリア・外灘(上画像)も併せて訪れるだろう。外灘では52棟もの西洋建築が黄浦江沿いにずらりと建ち並んでおり、その光景はまるで近代西洋の世界に迷い込んだかのよう。
また外灘から黄浦江の対岸を眺めてみれば、東方明珠電視塔を始めとした超高層ビルが所狭しと建ち並ぶ浦東新区は陸家嘴(りっかし)(上画像)の未来的景観を目にすることもできる。ほか、外灘の南端よりさらに南に位置する明代の庭園・豫園も上海の代表的な観光名所。