中国 豫園(Yu Yuan, China)

豫園 中国の名所

豫園の概要

 豫園(よえん)中国・上海(Shanghai)にある明代の庭園。上海といえば外灘に建ち並ぶ西洋式建築群、または浦東新区に林立する超高層ビル群といったように、近現代に建てられた建築や街並みが主な観光名所となっているが、豫園に関しては伝統的な中華風の庭園や建築物が広がっており、歴史ある中国らしい雰囲気を堪能できるスポットとなっている。

豫園商城

 また現在は敷地の一部が豫園商城というショッピングモールとして整備されており、入り組んだ路地には無数の土産物屋や飲食店等が軒を連ねている。今では凄まじい数の観光客が訪れる上海有数の繁華街及び観光エリアとして、毎日大変な賑わいを見せている。

豫園の歴史

 豫園は元々は16世紀半ばに私的庭園として造営されたもので、当時四川省の役人であった潘允端という人物が父・潘恩に贈るために1559年から1577年の18年の歳月をかけて完成させた。それから17世紀に入り潘氏が衰えると一時荒廃したが、17世紀半ばには上海城隍廟の廟園として再建された。(なお、現在も豫園の面積は約2万㎡に及ぶが、当時はその二倍もの広さがあったという。)

豫園商城

 時は下り19世紀半ばになると、上海は清のアヘン戦争敗北をきっかけに外国資本が大量に流入し、黄浦江西岸の土地一帯が「租界」として租借されるなど、欧米列強からの影響を強烈に受けることとなる。しかしながら、上海城隍廟のある旧県城は租界の外側(南側)に位置していたため、外国人が当地に足を踏み入れることはなく、中国人が引き続き居住しまた中国官憲の影響が及ぶ「華界」として存続した。(豫園一帯が今も中国的な雰囲気を色濃く残しているのは、そのような歴史的背景による。)

豫園商城

 なお、租界時代初期に当たる1853年には、太平天国の乱に呼応して蜂起した小刀会という反清武装勢力が豫園にある点春楼という建物に司令部を設置し、一年半に渡り県城を占拠するという事件が起こっている。(この時、安全を求めて中国人難民が大量に租界へと流れ込んだため、本来外国人居留地であったはずの租界はどの国籍の者に対しても開かれる「華洋雑居」と化した、という経緯がある。)その後、大戦の終結と共に租界時代も終焉を迎えると、豫園は敷地の半分が庭園に、残りの半分は豫園商城という現在の形に整備され、1961年に一般開放された。

豫園の見どころ

豫園商城

 豫園のエリアは前述したとおり、敷地の半分が明代の庭園、残りの半分は豫園商城というショッピングモールに大別される。実際に豫園を訪れる際は無料エリアである豫園商城の方にまず足を踏み入れることになるので、ここでもまずは豫園商城について記すこととする。

豫園商城

 豫園商城の魅力と言えば軒を連ねる飲食店や土産物屋での食べ歩きやショッピングだが、各店舗が入っている建物は伝統的な中華風の装飾や様式にて建設されているため、ただ路地を歩くだけでも十分楽しめる。また豫園商城には高層建築も多く、さらには通りの狭さも相まってより迫力のある街歩きを楽しむことができるだろう。

豫園 湖心亭

 そんな豫園商城の中でも最も中心となる場所と言えば、湖心亭という茶館の周りに広がる池(上画像)。なお湖心亭とは1855年創業の上海で最も古い茶館で、過去にはあのエリザベス女王も訪問したという。

豫園 九曲橋

 豫園商城が紹介される際は必ず取り上げられる由緒ある茶楼であるが、もちろん一般の観光客も利用可能。また湖心亭へと続くジグザクとした橋は九曲橋と言い、その独特な構造は悪霊を池にふるい落とすための中国の古い言い伝えによるものだという。

豫園 南翔饅頭店

 湖心亭周辺にはその他にも豫園商城を代表するお店が池を取り囲むようにして面しており、中でも南翔饅頭店(上画像)は1900年創業の言わずと知れた老舗小籠包専門店。豫園商城を訪れた際はこちらも外せない名店であり、毎日のように大行列が出来るその人気ぶりから上海で一番のレストランと言っても過言ではない。

豫園 緑波廊

 また上海料理の老舗である緑波廊(上画像左の建物)も、エリザベス女王をはじめとした各国元首が上海訪問の際に利用したという実績のある高級レストラン。建物は民国時代に造られた茶楼が利用されており、伝統的な建物の中で最高級の料理を堪能できる。

豫園

豫園 三穂堂

 次に、九曲橋を渡った先に広がる明代の庭園・豫園について記す(なお、ここから先は有料エリアとなる)。豫園にも非常に多くの建物が点在しているが、中でもメインとなる建物と言えば中に入ってすぐ正面に見える三穂堂(上画像)となるだろう。

豫園 三穂堂

 三穂堂は1760年に完成した豫園最古の楼閣で、豊作を祈願して建てられたという。なお内部には三つの扁額が掲げられているが、これは所有者が変わる毎に名前も変わったためだとか。

豫園 仰山堂

 三穂堂の裏には1866年築の仰山堂(上画像)というお堂が池に面して建っている。ちなみに豫園は分類上江南式庭園に当たるが、そのとおり水と建物が調和した光景を他にもよく見ることができる。

豫園 築山大假山

 続いて仰山堂の正面に見えるのは築山大假山(上画像)という太湖石による築山の風景。なお太湖石とは蘇州付近にある太湖周辺で算出された石灰岩のことで、多くの穴が開いた複雑な形状にその特徴がある。この奇岩は他にも園内の多くの地点で目にすることができる。

豫園 打唱台

 さらに奥へと進むと、上画像左に見えるのは前述した小刀会の司令部が設置された点春堂に面して建つ打唱台。こちらは演劇や歌が披露される舞台として使用されたという。また隣の築山上には快楼という建物も建っている。

豫園 会景堂

 豫園のちょうど真ん中に建つのは会景堂(上画像)という端正な造りの2階建て建築。

豫園 九獅軒

 会景堂の裏手には上画像のような大きな池も広がっている。この周辺は非常に緑が豊かで、忙しない豫園の中でもこの空間だけはゆったりとした庭園らしい雰囲気が漂っている。また池に突き出すようにして建つ九獅軒という建物(上画像左)も印象的。

豫園 玉華堂

 出口の方へと近づいて行く。庭園内にて最後に目にする建物となる玉華堂(上画像)は、この豫園を築いた潘允端の書斎として築かれたもの。

 池の上に架けられた積玉水廊という回廊(上画像)を渡って出口へ。

豫園の営業時間と入場料

【営業時間】
●豫園:9:00〜16:30(チケット発券は16:00まで)
※祝日を除く月曜は休業
●豫園商城:散策自由

【入場料】
●豫園:
・4~6月及び9~11月:40元(1元=20円として約800円)
・7〜8月及び12~3月:30元(1元=20円として約600円)
●豫園商城:無料

※昨今の中国の観光名所はインターネット上にて入場券を購入する必要があることが多いが、豫園に関しては有人の券売所があるのでそちらの方でも購入できる。なお筆者が訪れた際は何故かインターネットからだと購入できなかったので、はじめから券売所を利用した方が良いと思われる。

豫園の混雑・治安状況

 豫園は上海における代表的な観光名所の一つであることから、そこに集まる人の多さもまた凄まじい。また豫園は道幅が狭い路地も非常に多いことから、どこもかしこも混雑しており正直言ってあまり風情があるスポットとは言えない

豫園商城

 加えて豫園では治安状況にも注意した方がよい。豫園のような中国の繁華街では、一見素朴な雰囲気をした詐欺師二人組が日本人に声をかけ、相手が気を許したところでぼったくりの茶館に誘導するというのが典型的な詐欺の手口となっている。これは中国に限らず、外国で見知らぬ人から妙に親しみやすく話しかけられても、絶対に相手にしてはならない

豫園へのアクセス

上海地下鉄10号線「豫園駅」下車徒歩約10分

豫園周辺の名所

外灘 江海関

 冒頭で記したとおり、上海の観光と言えば西洋式建築が建ち並ぶ外灘と、超高層ビルが林立する浦東新区が二大観光名所として広く知られている。外灘(上画像)に関しては黄浦江の西岸、豫園の少し北に位置し、租界時代には欧米列強の影響を強烈に受けたため、今でも近代西洋の香りが色濃く残る街並みが広がっている。また外灘の最寄り駅である南京東路駅は、豫園の最寄り駅である豫園駅より地下鉄10号線で僅か1駅という近さ。さらに南京東路駅から外灘へは上海のメインストリート南京路が通じているので、中国屈指、世界有数の繁華街の街歩きも併せて楽しめる。

外灘 浦東新区 陸家嘴

 また黄浦江を渡った東岸の方には、90年代以降大規模な開発が行われた浦東新区の未来的空間が広がっている。中でも外灘からよく見渡せる陸家嘴(りっかし)というエリアにて超高層ビルが所狭しと建ち並んでおり、豫園からも目にすることができた高さ420mの上海金茂大厦(上画像右手に建つ一際大きなビル)もそのうちの一つとして存在感を放っている。

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